開発者コラム 開発者へのインタビューや、デナトロンでプチ実験した記事を掲載

静電気発生の原因と工業的対策についてなるべくやさしく解説

春一番が吹いたといってもまだまだ寒い日が続きますね。
寒い時期は空気が乾燥し、静電気が発生しやすく、気になる方もおられるのではないでしょうか。
今回は静電気について、基礎的な部分を書いていきたいと思います。

静電気の正体は「帯電」すること

日常で、プラスチック製品にホコリが付きやすかったり、紙やフィルムがめくり難かったりすることはないでしょうか。
化学実験をしている人なら、精密天秤の値が落ち着かなくてイライラした経験をお持ちかもしれません。
これは静電気の仕業だとなんとなくは分かると思いますが、そもそもなぜ静電気は発生するのでしょうか。

ホコリがつきやすいなどの現象は、物質が「帯電」するために起こります。
帯電とは、異なる物質を擦り合わせたり、くっついているものを離したりすると、物質中の電子が移動して電荷の偏りができる状態です。

原子の構造

物質を構成する原子は、原子核の中にプラスの電荷を持つ陽子と無電荷の中性子、原子核の外にマイナスの電荷を持つ電子が回っています。
通常は陽子(プラス)と電子(マイナス)の数は等しいのですが、原子核の外側を回っている電子は、外部の影響を受けやすく、接触などで簡単に他の原子に移動したり、他の原子から電子を受け取ったりします。

電子を放出した物質はプラスに電荷が偏り、電子を受け取った物質はマイナスに電荷が偏ります。

帯電の様子.png


この帯電している状態を広義的に「静電気」と呼びます(電荷が偏ったまま動かない状態なので、「静」電気と呼びます)。

なお、物質によってプラスに帯電しやすいもの、マイナスに帯電しやすいものがあります。
人の毛やガラスはプラスに帯電しやすく、ポリエステルやテフロンはマイナスに帯電しやすい性質をもちます。
「しやすい」と書いた訳は、プラスマイナスどちらに帯電するかは、接触する物質によって変わるからです。
(詳しくは「帯電列」を検索して調べていただくのが良いと思います。帯電列の順番については諸説あります。)

帯電している状態では、不足している電荷を補おうとするために、プラスに帯電しているものはマイナスを、マイナスに帯電しているものはプラスを引き寄せます。
同じ電荷に帯電しているもの同士は反発をします。
磁石のようなイメージですね。
この力でホコリを吸い寄せたり、精密天秤に誤差を生じさせたりしています。
静電気でほこりが付くフィルム静電気の影響をうける電子天秤

それではこの帯電した状態は続くのでしょうか?
帯電は不安定な状態ですから、可能なかぎり電子は移動して電荷を中性に戻そうとします。
帯電したものが鉄や銅などの金属だと、他のものに触れた途端、電子の供給又は放出を行い、帯電を解消します。
これは導電性(電気を通す性質)があるためです。導電性のあるものは電子が動きやすいのです。

反面、絶縁性(電気を通しにくい性質)であるプラスチック製品などは、電子が動けないので帯電状態が続きます。
絶縁体は大気中の水分などを伝って徐々に帯電を解消しますが、その速度が遅いため、静電気となり、ホコリを引き寄せるなどの現象が起こります。

バチっと痛いのは「静電気放電」

冬にドアノブに触れる時など、バチっと電気が走った経験はだれしもあるかと思います。
この現象も一般的には静電気と呼ばれていますが、厳密には「静電気放電」という現象です。

バチっとくる図.png
静電気放電は帯電した導体が他の導体と接近することによって発生します。
帯電した導体(人体など)が電荷を中性にしたがっている所に、他の導体が近づくことで、一気に電子を放出(または供給)するイメージです。
電子が移動することは電気が流れることと同じですので、電子が大量、急速に移動することでバチッという「放電」が発生します。
絶縁体は電子が移動できないので、近づいても放電が起こりません。

ちなみに、導体は即座に帯電を解消すると先に書きましたが、導体が絶縁体に包まれている場合は、電気の通り道が断たれてしまうので、帯電した状態になります。
人体でいうと、ゴム底の靴や化繊の靴下など、地面(アース)に触れる部分が絶縁性だと、帯電してしまいます。
(それなので、はだしで生活すれば静電気は起きにくいかもしれません)

工業への静電気の影響

「帯電」と「静電気放電」について書きましたが、これらは日常だけでなく、工業的にも問題になることが多いです。

  • 電子部品を入れるトレー(キャリアテープ等)が帯電し、ホコリが付く
  • PETなどのプラスチックフィルムが帯電し、ホコリが付く
  • 静電気放電で半導体素子が壊れる
  • 静電気放電が有機溶剤や粉じんに引火し爆発する

など、様々な影響を及ぼしています。
(ちなみに、コピー機の印刷に利用されるなど、悪いことばかりではありません)

様々な帯電防止策

様々な影響がある静電気ですが、対策としてはどういったものがあげられるのでしょうか。
それは「帯電しにくい状態、もしくは帯電してもすぐ解消できる状態を作ること」です。
基本的には、電子(電気)の通り道を確保することが重要になります。

導体にはアース(接地)を取る

導体であれば、電子の移動がスムーズにできるので、一部アースを取れば大地から電子の供給または放出経路ができ、帯電しにくい状態を作れます。ただし絶縁体は自由に電子の移動ができないため、効果がありません。

湿度を上げる

 湿度が高いと、物質表面に吸着する水分も多くなります。この水分が物質表面の電気伝導性を上げるため、帯電が起こりにくくなります。夏にあまり静電気の話を聞かないのは湿度が高いためです。
 しかし、湿気を嫌うものを扱っている場合や、湿度管理が不可能な場合は適応が難しい方法です。

イオンを与える

 イオナイザーで帯電している電荷と反対の電荷を与えて中和します。
 簡単にできますが、イオナイザーを設置している環境下のみ有効となります。

絶縁体を導体にする (練りこみ)

プラスチック、ゴムなどの絶縁体は帯電しやすいので、成型する前に導電性の粒子を練りこむ方法があります。練りこむものとして、カーボンブラックや界面活性剤などが使われています。
練りこむと、その素材全体が導電体になるため、耐久性は高いですが、素材本来の性能が損なわれてしまう恐れがあります。

絶縁体の表面を導体にする (コーティング)

表面に薄く導電性の層をコーティングする方法です。比較的簡便なため、広く適応されています。
分類として、界面活性剤をコーティングするイオン伝導型と、金属や導電性高分子をコーティングする電子伝導型があります。
イオン伝導型は、界面活性剤の親水基が大気中の水分を物質表面に引き寄せ、水分中でイオンが移動することにより、電子を運びます。水分を必要とするため、湿度が低いと効果が弱まります。
電子伝導型はその名の通り、コーティングそのものが電子の通り道を作ります。
デナトロンはPEDOT:PSSという導電性高分子をベースとしたコーティング剤なので、この部類となります。

イオン伝導と電子伝導の導電機構の

湿度影響についてもう少し詳しく説明するため、電子伝導型であるデナトロンと、イオン伝導型をPETフィルムに塗布し、湿度を変えて表面抵抗率を測定したデータを載せます。

界面活性剤とデナトロンの湿度による表面抵抗率

表面抵抗率は単位面積あたりの電気抵抗率で、低ければ低い程電気がよく通ります。
帯電防止用途でよく使われるのは104~1013Ω/sq.の表面抵抗率となるので、イオン伝導型だと、低湿度で効果が弱まってしまうことが分かります。

帯電防止グレードについて詳しくは製品情報ページにも掲載していますので、こちらもご確認ください。
http://advancedcoatings.nagasechemtex.co.jp/lineup/as.html

長くなりましたが、上記のように帯電防止策にも様々なものがあります。
透明なコーティングによる帯電防止をご検討の場合は、デナトロンが適応できるかもしれませんので、ぜひご相談ください。


導電性ポリマー(PEDOT:PSS)塗料デナトロンのお問い合わせはこちらから。
http://advancedcoatings.nagasechemtex.co.jp/contact/

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